スキンヘッドの貴公子?かぼちゃの中のビリー・コーガン特集!
2020.11.16 アーティスト特集気になるアーティストの使用エフェクターを掘り下げるアーティスト特集。今回は2020/11/27に2枚組20曲を収録した11枚目のスタジオ・アルバム「Cyr」発売を発表したTHE SMASHING PUMPKINSのフロントマン、ビリー・コーガンの使用エフェクターに迫ってみたいと思います!
来歴
ビリー・コーガン(本名:ウィリアム・パトリック・コーガンJr.)は、1967年3月17日アメリカイリノイ州シカゴに隣接した街、エルク・グローヴ・ヴィレッジで誕生しました。お父さんはブルースミュージシャンということで、もともと音楽の素養があったのでしょうか。
その後両親が離婚、実父の再婚、離婚などを経験します。本人はこのような複雑な家庭環境が表現の源になったと語っているようです。
高校入学までは熱心な野球少年だったようですが、ある日友人の家で目にしたフライングVがビリーの人生を変えます。その後ギターを手に入れたビリーは独学でギターを弾くようになり、ブラック・サバスやクイーン、ボストン、チープトリックなどがお気に入りでしたが、バウハウスとザ・キュアーに出会ったことがきっかけでオルタナティブ・ロックに興味を持つようになりました。
THE SMASHING PUMPKINSについて
その後1988年にジェームス・イハらとスマッシング・パンプキンズを結成して初めてのステージに立ち、サブ・ポップなどのインディーレーベルからシングルを出した後1991年にアルバム「ギッシュ」でメジャーデビューを果たします。
スマッシング・パンプキンズデビュー当時はオルタナティブロック全盛の時期。数多くのオルタナティブ(グランジ)・バンドの一つとみなされる中、セカンドアルバム「サイアミーズ・ドリーム」を制作します。代表曲のひとつ「トゥデイ」を収録した本アルバムは聴衆と評論家に受け入れられ大ヒットを記録、プラチナに認定されています。
セカンドアルバムまでの音楽性はまさにグランジロック!ファズで歪ませたギターに歌メロと絶叫系のサビを載せた楽曲が多く、比較的ストレートなロックサウンドでしたが、ビリー・コーガンの独特な声がその音楽性を他と一線を画すものとしていました。
その後2枚組の大作アルバム「メロンコリーそして終わりのない悲しみ」を発表。米国のみで一千万枚近くのセールスを記録し、グラミーでは7部門にノミネート。タイム誌による年間ベストアルバムに選ばれるなど、音楽的にも高い評価を得ますが、メンバーのドラッグによる逮捕など、トラブルにも見舞われてしまいます。
このサードアルバムでバンドの音楽性が大きく進化を遂げます。多くの楽曲が収録されたアルバムには今までのバンドの作風を踏襲したものもありますが、いわゆるアメリカン・ロック、オルタナティブとは一線を画す、ブリティッシュ・ロックの影響を色濃く感じされる楽曲も多く収録されています。ちなみにこの頃にビリーの見た目も進化を遂げてスキンヘッドになっており、当時のファンを驚かせました(笑)
個人的なイメージですが、当時の代表的なオルタナティブ・バンドを「ニルヴァーナ」「パール・ジャム」「スマッシング・パンプキンズ」とするとそれぞれが異なるルーツを持っていると感じます。
ニルヴァーナは「アメリカの王道ポップ」いわゆる覚えやすいポップなメロディーを持った楽曲、パール・ジャムはブルースやカントリーといったアメリカの伝統的な音楽。一方スマッシング・パンプキンズはこれらのアメリカの音楽をルーツにするのではなく、憂いを帯びたメロディラインやドラマティックな曲展開など、パンクやニューウェイブのようなブリティッシュ・ロックのテイストをルーツにしていると感じます。
その後発表されるアルバムは、楽曲の方向性やアレンジなどは色々と変化していきますが、楽曲のベースにはブリティッシュ・ロックの影響を色濃く感じます。
ズワン、ソロ活動、そして再結成
その後バンドは解散、ビリーとドラマーのジミーチャンバレン(ドラッグで逮捕された張本人)はバンド「ズワン」を結成しますが、アルバム1枚を発表して解散してしまいます。
2005年にはソロアルバムを発表しますが、アルバムの売上は伸びずセールス的には失敗してしまいます。
2005年頃からスマッシング・パンプキンズは再結成やメンバーの入れ替えを繰り返しますが、2015年にほぼオリジナルメンバー(ベースのダーシー除く)のスマッシング・パンプキンズが始動します。
今回発表されたアルバムの先行トラックを聴くと、解散前により増してブリティッシュ・ロック寄りの楽曲が増えている様子で、「グランジロックです!」というような楽曲はかなり影を潜めたアルバムになっているようです。
トラックメーカーとして
スマッシング・パンプキンズのアルバムでは多くの楽曲を収録されたものが多く、トラックメーカーとしてのビリーの多作ぶりが発揮されています。作風も様々で、引き出しの多さが伺われますね。クイーンなどにも影響を強く受けているためか、コーラスワークなども複雑でいわゆるアメリカン・ロックとは一線を画すトラックメーカーと言えます。
ビリー・コーガンの使用エフェクター
Electro-Harmonix Big Muff Pi
ビリーの初期の楽曲で特徴的なのはバリバリに歪んだファズトーン。その音はもはやグランジロックで使われるファズのド定番であるビッグマフで作られています。本当に当時のオルタナティブ・バンドは殆ど使っていたんじゃないかというくらい、様々な楽曲で使用されていますね。
こちらの動画ではビリー自らレコーディングで使用した様々なエフェクターを紹介してくれています。中には眼を見張るようなヴィンテージエフェクターもありますが、カートにまとめて入れられてかなり雑な扱いのように見えますね(笑)
Electro-Harmonix Op-Amp Big Muff Pi
上記のBig Muff Piを現在の技術でコンパクトにしたエフェクターです。動画ではビリーが試奏していますが、まさに「スマパン」な音がしてますね。
MXR M101 Phase 90
こちらの動画ではビリーが自らの機材を解説しています。エフェクトボードの中にPhase90が1台挟んで2台セットされています。
Electro-Harmonix Small Stone Phase Shifter
こちらもフェイザーの名機「Small Stone Phase Shifter」です。サウンドキャラクターを変えられるColorスイッチを搭載し、独特なウネリを得られます。
Electro-Harmonix Small Clone Analog Chorus
こちらもElectro-Harmonixのコーラスの名機「Small Clone Analog Chorus」。某バンドのフロントマンが使用していたことで有名な人気機種ですが、ビリーも使用していたようです。
音がクローンになってダブって聞こえるのが名前の由来のようで、12弦ギターのようなトーンも作れます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。ビリーといえばという感じで「Electro-Harmonix」のエフェクターが多くなってしまいましたが、先に紹介した動画のように、ヴィンテージのエフェクターも多く使用しているようです。楽曲の中でこれらのエフェクターがどのように使用されているのか、考えながら聞くのも楽しいのではないでしょうか。新しいアルバムではまた新たなサウンドが聞けることを楽しみにしましょう!
それでは皆様、良きエフェクターライフを!!