伝説のオーバードライブの代表選手!KLON KTR!!
2020.07.15 エフェクター紹介今回ご紹介するのはKLON社のKTR!伝説のオーバードライブと言われた同社のCENTAUR(ケンタウロス)の正統な後継機種です。国内外問わず数多くのアーティストが所有する、言わずと知れた名器ですね。そんなKTRの魅力について、歴史を振り返りながら迫っていきたいと思います。
KLONのCENTAURとは
KTRの前に旧モデルとなるCENTAURの歴史について説明していきます。1994年、アメリカのマサチューセッツ州ボストンでBill Finnegan(ビル・フィネガン)とその友人によって開発されました。
フィネガンが追い求めていたのは、ギターの音を邪魔せず真空管アンプの良さをそのまま引き出せるものでした。そうして作られたこのエフェクターは、当時の相場よりも高額の値段がつけられていたにも関わらず発売後瞬く間に人気となり、どんどん需要が増えていきました。
組み立てから出荷までフィネガン一人で行っていましたが、約8000台のCENTAURを作り終え、2009年頃に一時生産を中止してしまいます。そのため、製品自体の人気とその希少さから初期型、後期型まで含めて現在では大体10~30万円前後で取引され、その価格も年々高騰しているようです。
KLONのKTRとは
CENTAURをブラッシュアップして作られた正統な後継機種となるオーバードライブで2012年に発売が開始されました。CENTAURの構造は複雑な作りをしており、部品には専用のものが使われていたため、製造に時間もコストもかかっていました。そこでフィネガンは一から設計をし直し、品質は保ったまま、よりシンプルでコンパクトな作りのKTRを開発しました。
CENTAURとの違い
ここから先は技術的な話になります。フィネガンはKTRの設計を始める際に以下の条件を設けていました。
1.委託メーカーが簡単かつ正確に作業できるように簡単な設計にする
2.頑丈で信頼性のあるものにする
3.フックアップ・ワイヤを使わない
4.簡単に交換できるようにフットスイッチは単体の組み込み式にする
5.CENTAURより小さくコンパクトにする
5番にあげた筐体をコンパクトにする方法として、回路の基盤には従来のスルーホール実装ではなくSMT(表面実装)という手法を使っているそうです。この手法は電子回路を持つほとんどの製品で採用されている方式で、従来よりも基板面積を小さくすることができます。ただし、フィネガンが最もこだわっているNOSのゲルマニウム・ダイオードはCENTAURと全く同じものが使われています。これはまだインターネットもEメールも普及していない時代に様々な販売店に連絡を取り、あらゆる種類を試した結果見つけたものでCENTAURの音を出すためには欠かせない電子部品なのだそうです。
上記以外には電源プラグが一般的なDCジャックに変更され、CENTAURの時と同様のバッファードバイパスとトゥルーバイパスを選択できるようになっています。こだわりは残しつつ、現代向けの仕様も追加されているんですね。
また、デザインも大幅に変更されています。CENTAURのときはゴールド、又はシルバーの塗装にケンタウロスのイラストが特徴的でしたが(イラスト無しもありますが)、KTRはボルドーの塗装に白文字で「Kindly remember: The ridiculous hype that offends so many is not of my making.」とメッセージが書かれています。簡単に訳すと「多くの人を不快にするバカげた誇大広告は私のせいではありません。」という意味になります。CENTAURの歴史を知らなければなんのことやらと言う感じでが、これは個体数に対して高まる需要によって高騰し続けるCENTAURの価値や取引全般を揶揄しているのかもしれませんね。フィネガンにとっては評判だけが独り歩きしているように感じたのかもしれません。
と、ここまでいくつかの違いをあげてきましたが、まとめるとKTRはCENTAURのサウンドをより安価で手に入れることができ、ボードにも組み込みやすく扱いやすくなったということです。
KTRのサウンド
基本的にCENTAURと変わりません。ブースターとして使うと、中域から全体を押し上げるように倍音され音抜けが良くなります。歪みを加えるとさらに重厚感がまし、高域を上げると煌びやかさを感じられます。いずれも原音を損なうことなく、元々の良さを活かしたまま迫力が増していく感じです。これはフィネガンが理想としていた、まさにプレイヤーが持つギターやアンプの良さを邪魔しないオーバードライブと言えます。
違いを述べるとするならばKTRの方が音のクリアさ、歪みの強さ共に多少優っているのではないでしょうか。レンジも広く設定次第で色々な使い方ができそうです。バッキングとしてもブースターとしても役立ってくれそうです。
使用者の中には「CENTAURとは違う」「CENTAURの音にはならない」という方も稀にいるようですが、正しくは「CENTAURの音も持ちつつ、KTR自身の音も持っている」だと思います。何より2年間何百もの部品を試してCENTAURの音に近づけてきたフィネガン自身が断言しています。
KTRを使用しているアーティスト
KTRを使うプロのアーティストを紹介していきます。日本人アーティストではB’zの松本孝弘、CharをはじめNumber Girlの田渕ひさ子、くるりの岸田繁、ELLE GARDENのギターかつ、Nothing’s Carved In Stoneのギターでもある生形真一、BUMP OF CHICKENのギター&ボーカル藤原基央などなどKTRとCENTAUR両方所有している方も多くいるようです。
海外アーティストではRed Hot Chili Peppersの元メンバーであるJosh Klinghoffer、AerosmithのJoe Perry、The StrokesのNick Valensiなどなど、他にもたくさんのアーティストの方が所有しているようです。さすが伝説のエフェクター、そうそうたる顔ぶれですね。
まとめ
今回はKLON KTRについてご紹介いたしました。後継機種やクローン製品も数多く発売されている人気機種ですので、ぜひ一度手に入れて体験してみてください。